医師紹介
四つ葉の在宅医療

患者さんに思いをめぐらす
胡 医師
少し前の話です。急にご自宅に退院された女性患者さんがいらっしゃいました。自宅がお寺で、お盆の季節でもあり、自分がいないと仕事が回らないでしょうと心配されていました。また、娘さんが結婚式を控えており、式に参加したいとも仰っていました。毎回訪問した時、とても重い病で身体がきついはずですが、身体の症状よりもご家族への思いのお話をされていました。身体がもつ限り、家事を手伝い、娘さんの結婚式にも頑張って出席できました。
わずか1か月あまりの短い時間でしたが、ご自宅で旅立ったときのほっとしたような笑顔を今でも鮮明に覚えています。彼女にとって、入院生活よりもきっとご自宅でやりたいことや、ご家族と一緒に過ごす時間の方がずっと大切であり、最期までご家族と過ごすことができて満足されていたと思います。
それ以来、患者さんの立場で物事を考える習慣がつき、その人らしい在宅生活を支えられるように日々努力しています。

時には引き算の医療を
中尾 医師
患者さんの病状が進行したり、年齢とともに体力が低下するなど最期の時が近づいている姿を目の当たりにすると、『なんとか元気にしてあげたい』と願うことは当然であり、それが家族など親しい存在であればなおさらです。
薬の追加、点滴、胃瘻栄養、吸引処置・・・など何かをしてあげる『足し算の医療』を選択することは簡単で、医療者としてもその方が楽な場合があります。しかし、点滴などの医療処置から開放されることで穏やかな最期を迎えられる患者さんをたくさん経験させていただき、医療というのはあくまでも患者さんの人生の一部でしかなく改めて『引き算の医療』の大切さに気付かされました。
数値やデータではなく、患者さんご本人を診ることを心がけてご自宅での生活をサポートしていきたいと考えています。

患者さんと一緒に考える
瀬尾 医師
私はこれまでの医師人生の大半を急性期領域で過ごしてきました。その中で、患者さんの生活環境や退院されていく患者さんのその後の経過に興味を持つようになり、2022年から在宅医療の世界に入りました。
四つ葉在宅クリニックに入職してからは多くの患者さん・家族さんに出会い、学ばせて頂きました。
在宅医療ではお看取りに立ち会う場面が時にあります。その際、家族さんの涙もありますがそれ以上に納得した表情・すっきりした表情が多く、在宅におけるお看取りの「質の高さ」を実感します。
昨年までは患者さんから学ぶことが多かったですが、今年度は「患者さんと一緒に考える」をテーマに治療だけではなく、日々の生活での困りごとなどしっかりサポートできるよう努力していきたいと思います。

「おうちパワー」を信じて
藤沼 医師
退院後、ご自宅に戻られた患者さんの病状や体調が予想以上に良くなることがあります。その背景には、ご自宅の匂いや家族の気配といった「おうちパワー」の存在があると感じます。住み慣れた環境は安心感を与え、自分らしい生活を支える大きな力となるのでしょう。
患者さんがご自宅で快適に過ごし、より良い状態を維持できるよう努めています。医療の力だけでなく、環境や家族の温もりがもたらす回復力を大切にしながら、日々の診療にあたっています。住み慣れた場所で、その人にふさわしい生活を送れるよう支援することが、何よりの願いです。

患者さんにそれぞれの“正解”がある
藤井 医師
自宅に退院された患者さん、外来通院が難しくなった患者さん、そのような方々に私は病院に勤務していたときに多くは関わることができませんでした。自宅で療養される患者さんが入退院を繰り返さないように、そして安心して過ごせるように、医学的なサポートを行っていきたいと思い、この度在宅医療の世界に足を踏み入れました。
病院にいる患者さんは退院することを目標としますが、在宅の世界では患者さんそれぞれ背景が異なり、必要とする医療サポートも異なります。医療者として何をするのが〝正解〟か、その答えは一つではないということを在宅医療の現場で学びました。一人一人の患者さんに耳を傾け、その方が自分らしく過ごしていけるよう、私はこれからお手伝いしていきたいと思います。